景気の良し悪し

景気がいい、景気が悪いという言葉は、日常生活でもよく使われますが、非常に抽象的な言葉です。ここでは、景気がいい(好景気)とは具体的にどういう状態なのか、景気が悪い(不景気)とは具体的にどういう状態なのか、改めて考えてみましょう。

大雑把に言うと

まずは抽象的に好景気と不景気について考えてみましょう。

○好景気(好況)とは

モノの購入量が増加し、モノの生産量が増加し、企業業績が良くなる状態です。それに伴い、賃金上昇、失業率低下、金利上昇、物価上昇(インフレ)が起こります。

○不景気(不況)とは

モノの購入量が減少し、モノの生産量が減少し、企業業績が悪くなる状態です。それに伴い、賃金低下、失業率増加、金利下落、物価下落(デフレ)が起こります。

もっと専門的に言うと

では、景気の良しあしをどう判断すればいいのでしょうか?日本で最も有名な指標としては、景気動向指数があります。

○景気動向指数

内閣府が、生産や雇用など複数の指標を統合して発表する指標です。詳しくはこちら

 加えて、景気を判断するのに重要な経済指標を紹介しておきます。注意していただきたいのは、経済指標が良くなったからと言って、金融市場も良くなるわけではないということです。投資家がもともと良くなると予想していれば、それを見込んで先に投資行動をとっているので、予想通りだと金融市場になんの動きもありません。むしろ、すごく良くなると予想していたのに、少しだけ良いという結果だった場合は、市場は下落ムードになります。よく言われる「市場は織り込み済み」というやつです。投資は先読みの心理戦という一面もあります。

  • 小売売上高
  • GDP(国内総生産)
  • 日銀短観
  • 米国雇用統計
  • 政策金利
  • CPI(消費者物価指数)

○小売売上高

まずはモノの購入量についての指標です。小売り売上高は、スーパーや百貨店などを対象に、売上高に関してサンプル調査を行った結果を数値化したものです。特に、米国では小売売上がGDPの大半を占めることから、経済状況を示す重要な数値となっています。前回の結果に比べて数値が増加していれば、消費が増加して経済が拡大していることを表します。

○GDP(国内総生産)

次に物の生産量についての指標です。GDPは一年間の経済活動の大きさを表すもので、一年間に国内で生み出された利益の合計金額として算出されます。GDPがA国より大きければ、自国の方がA国より経済規模が大きいということが分かります。また、昨年よりもGDPが増えていれば、それだけ経済が成長したと判断できます。

GPDが何%成長したかという指標は、GDP成長率といわれ、その値が安定して推移していれば、経済が好調だといえます。しかし、一つ注意が必要です。10年20年前と比べようとすると、インフレやデフレによってお金の価値も変化しているので、正確なGDP成長率の比較ができません。そこで重要なのが、実質GDP成長率と呼ばれる指標で、GDPから物価の上昇率を引いて計算されます。

実質GDP成長率 = GDP成長率 - 物価上昇率

実質GDP成長率が期待値よりも低いと、今後の経済状況悪化のサインとしてとらえられ、株価の下落に繋がります。

○日銀短観

日本銀行が、全国約1万社の企業を対象にして、全国の企業動向を把握するための調査書です。詳しくはこちら

○米国雇用統計

日本ではなく海外の指標も取り上げておきましょう。その名の通りアメリカの雇用に関する指数です。米国の金融商品を購入するときはもちろんですが、米国の経済は世界全体にも影響を与えるので日本でも重要な数字になります。中でも特に重要なのが非農業部門雇用者数と失業率です。

非農業部門雇用者数が増加するということは、雇用が安定し経済が順調に回っていることを表しています。失業率は労働力人口の中で失業状態の人の割合を表し、これが減少すると経済が安定していることを表します。

○CPI(Consumer Price Index:消費者物価指数)

最後に、物価についての指標です。CPIは消費者が購入している商品の平均価格を追いかけた数字です。各国や各地域で定期的に調査されていて、物価の上昇を数値化したものです。様々な種類の中でも、価格変動の少ない商品だけを選んだコア指数が最も注目されます。金融市場にとっては、安定した長期の上昇が望ましいです。

以上のように、購買量、生産量、企業業績、賃金、失業率、金利、物価について、代表的な指標を紹介してきました、ニュースなどでも頻繁に報道される指標ですので、ぜひ覚えておいてください。