前の項で、成り行き注文と指値注文について学びました。ここでは、株価がどのように決まり、どの価格で約定していくのかを説明します。
株の決まり方には、二つの方法があります。
取引開始時点、および取引終了時点で行われる板寄せ方式と、取引時間中に行われるザラ場方式です。
株価の決まり方は、そもそも板の見方を知らないと理解が難しいです。そこで、まずは板の見方を解説します。
そして、板寄せ方式、ザラ場方式について説明します。
前章で、指値注文について説明しました。株株工業の株に対して、あなたが一株950円以下の買い注文を10口分出したとしましょう。同じように、Aさんが株株工業の株を一株949円以下の買い注文を20口分出したとします。Bさんが、一株948円以上の売り注文を30口分出したとしましょう。株式取引を管理している証券取引所では、多くの人から出された注文を、上手くさばいて株の売買を成立させなければなりません。ということはまず、株株工業の株に対して、どんな注文が出されているかの情報を集約する必要があります。そこまで複雑ではないので、エクセルの表を使って集計することができるでしょう。しかし、その表の作り方にはいろいろなパターンが考えられます。どんな集計の仕方をすればよさそうか、考えてみてください。集約しないといけない情報としては、買い注文が、どの値段に対して、どの数量出されているのか、売り注文がどの値段に対してどの数量出されているかです。
数あるパターンの内、最も分かりやすいだろうということで採用されているのが板です。下のような感じです。
売り数量 | 気配値 | 買い数量 |
成行 | ||
950 | 10 | |
949 | 20 | |
30 | 948 | |
947 | ||
946 | ||
成行 |
これと同じようなパターンを想像した人も多いでしょう。では、さらに追加で、Cさんが948円以下の買い注文25口、Dさんが950円以下の買い注文20口、Eさんが948円以上の売り注文200口した後、さらにEさんが追加で948円以上の売り注文10口が出された場合どうなるでしょう?考えてみてください。正解は以下です。
売り数量 | 気配値 | 買い数量 |
成行 | ||
950 | 30 | |
949 | 20 | |
240 | 948 | 25 |
947 | ||
946 | ||
成行 |
ポイントは同じ指値での注文が複数出された場合です。その場合は、その口数を合計した数字を記入してください。ここで注意点です。どの注文が誰から出されたものなのかは、システム情報ではしっかり管理されています。そうしないと、誰からお金を受け取って、誰に渡すか分からなくなります。しかし、そんな情報まで記載するととても見れた表になりません。なので板では、同じ価格の注文は数量を合計します。また、同じ人からの注文であっても、注文したタイミングもシステム上にしっかりと記録されますが、板には出てきません。
最後に、成り行き注文も板で表現してみましょう。成行の買い注文とは「どんなに高くてもいいから今日中に買う」、成行きの売り注文は「どんなに安くてもいいから今日中に売る」というものでした。Xさんから成行の買い注文が15口、Yさんから成行の売り注文が100口出された場合をうまく表現してみてください。正解は以下です。
売り数量 | 気配値 | 買い数量 |
成行 | 15 | |
950 | 30 | |
949 | 20 | |
240 | 948 | 25 |
947 | ||
946 | ||
100 | 成行 |
どうでしたか?簡単に解説します。成行の買いは、どんなに高くてもなので、一番高いところに書きました。成行の売りは、どんなに安くてもなので一番低いところに書きました。
株式市場は日中しか空いていませんが、注文は深夜でもつけつけられます。したがって、明日の株式市場が開くまでの間、大量の注文が出されます。そして、証券取引所は、それらの取引を迅速に成立させる必要があります。しかも、株価は需要と供給で決まりますので、瞬時に誰もが納得できる価格(約定価格)を決めて、できるだけ多くの取引を素早く成立させる必要があります。そのために現在採用されているのが板寄せ方式です。
板寄せ方式において、最も守らなければならないことがあります。それは成り行き注文をすべて成立させることです。そもそも成り行き注文は、どんな価格でもいいから売買を行う注文方法なので、当然ですね。とは言っても、売りの注文が一つもなくて、買いの成行注文が大量に出された時は、当然取引が成立しません。反対の注文が出されている限りにおいて、成り行き注文をすべて成立させる必要があります。
成行注文がすべて成立した後は、今度はより高い買い注文を出した人を優先的に、より安い注文を出した人を優先的に成立させます。そして、その取引の数を最大化する必要があります。逆に言えば、取引を最大限成立させられるような約定価格をどうやって決めればいいかということを考えなければなりません。それを考えやすくしたのが板です。
ちょっと板に情報を追加してみましょう。両隣に、注文数の累計を入力しておきます。
ここでまずは適当に、約定価格を946円と仮定しましょう。
この場合、成行き注文(いくらでも売りますよ)の注文が100口ありますが、それ以外は946円で売ってくれる人はいません。
一方、成行き注文(いくらでも買いますよ)の注文が15口と、950円以下なら買うが30口、949円以下なら買うが20口、948円以下なら買うが25口の、合計90口の注文が
一旦板寄せ方式で株価が決まっても、そこから大量の注文が入ってきます。そして需要と供給のバランスを取れるように株価を変動させながら、取引を迅速に成立させる必要があります。そこで採用されているのがザラ場方式です。