金融商品の相関図


 これまで、株、債券、不動産について説明してきました。さらに、金や穀物、原油などといった商品(コモディティ)も投資対象となります。日用品や食料品なども商品に含めるとしましょう。これらはすべて、通貨と交換ができます。この状態を表すと、下図のような相関図になります。

金融商品の相関図1

 金融商品と、通貨との交換比率は常に変動しており、株式との交換比率は株価、債券との交換比率は債券価格、不動産との交換比率は不動産価格、商品との交換比率は物価という形で数値化されます。

金融商品の相関図

 さらに、日本に限らず他国でも同じような相関関係が存在しています。そして、日本の通貨と、他国の通貨の交換比率も常に変動しており、その比率は為替という形で数値化されます。例えば他国の株式を買おうとした場合は、いったん日本の通貨と他国の通貨を交換し、さらに他国の通貨と株式を交換することで取得できます。したがって、為替と他国の株価の変動の影響を受けます。

金融商品の相関図2

 もっと詳しく見てみましょう。それぞれの交換比率は需要と供給の関係で決まりますが、常に変動します。変動する要因としては、景気の良しあし、金利の増減、政治の動向(政策や法律、政治情勢など)、そして災害(地震や洪水、台風など)、などが挙げられます。逆に、金融商品の価格によって、景気や金利、政治なども影響を受けます。経済のグローバル化が進んだ現代では、他国での要因が、日本の金融商品へ大きく影響を与えることも多々あります。

金融商品の相関図3

 以降の章では、それぞれの要因が具体的にどのような影響を及ぼすのか見ていきましょう。

 参考 →リンク

景気の影響

 景気の良し悪しを参照のこと。

 好景気になれば、多くの企業の業績がよくなり、配当が増え、今後の利益拡大も見込めるため、株式の人気が高まります。そして株価が上昇します。また、金銭的に余裕のある人が増えて商品と不動産の需要が高まり、物価や不動産価格が上昇します。一方で、リターンの低い債券の人気は下がり、債券価格は下がる傾向にあります。

 不景気になれば逆のことが起こります。株価や不動産価格が下落し、債券の価格は上昇する傾向にあります。一般的な商品の物価も下落する傾向にありますが、一部例外もあります。例えば金などの商品は、大昔から実物としての価値が評価されており、世界中で人気があるので、逆に安全資産として人気が高まり、価格が上昇します。

 

 また、景気が良くなると、より大きな事業投資のためにお金を借りようとする企業や個人が増えます。そうすると、利息が高くても借りたいという人が増えるため、金利が上昇します。

景気が金融商品に及ぼす影響

金利の影響

 金利についてを参照のこと

 金利が上がると利息の支払いが増えるため、企業がお金を借りるのを避けるようになり、売り上げや事業投資が減少します。そして、企業業績が全体的に悪化し、長期的には株価が下落する傾向にあります。逆に、銀行にお金を預けておくだけで多くの利息がもらえるため、わざわざリスクを冒して債券を買う人が減り、債券価格も下落する傾向にあります。不動産を購入する時のローンの金利も上がるので、不動産を買い辛くなり、不動産価格も下落します。 金利が上がると、銀行などからお金を借りている企業はより多くの利息を払わなければならないため、より多くの利益を出すために商品の価格を上げざるを得なくなります。したがって、物価が上がる傾向にあります

 金利が下がると逆のことが起こり、株価、債券価格、不動産価格は上昇します。

 

 金利がある程度上昇すると、企業業績や個人消費が落ち込み、景気が悪くなります。

金利が金融商品に及ぼす影響

 

 このように、経済は、景気が良くなる→金利が上昇する→景気が悪くなる→金利が下がる という循環を経ます。景気の循環については、景気循環のページで解説します。

 

 景気循環は、大きな波を持っています。そのため、個人の生活が大きく揺さぶられてしまいます。その波を極力小さく抑えるため、各国政府は景気や金利をコントロールする政策を行っています。詳しくは次ページで解説します。

政治の影響

 世の中に出回っているお金の量は、実は日本銀行によってコントロールされています。日本銀行は、大量の株式や債券を保有しています。日本銀行が追加で株式や債券を買えば、株価や債券価格は上昇します。株価を低迷から回復させたいときなどは、政治判断で日本銀行が大量の株式を買うことがあります。公開市場操作といいます。

 

 政策金利 リンク

 政策金利とは、中央銀行が設定する短期金利(一年以内の場合に適用する金利)のことです。 民間銀行と中央銀行はこの金利でお金のやり取りをします。なので、民間銀行が個人や企業とお金のやり取りをするときも、この金利が基準となります。

 長期金利については、新発10年国債の利息の設定方法でコントロールします。

 

政治主導で株価を上昇させようとする場合があります。法律を変えたり、国費を投入したりします。その狙い通りになれば株価や不動産価格が上昇し、債券価格は下落します。景気の過熱を抑えるために、日本銀行が金利を挙げて沈静化させようとすることもあります。

 

 ロシアのウクライナ侵攻のように、政治的リスクが高まると、投資家たちの間で将来への不安が広がり、株価や不動産価格が下落し、債券価格は上昇します。

○財政政策 政府が行う経済操作

・歳入の変更

増税で歳入を増やせば、景気は後退。減税で歳入を減らせば、景気は回復。

・歳出の変更

公共投資(インフラ整備など)で歳出を増やせば、景気は回復。

・その他

NISAなどの投資優遇措置。戦争などの政治的リスク。

 

 

○金融政策 日本銀行が行う経済操作

・政策金利(昔でいう公定歩合。→短期金利の操作) 日本銀行が民間銀行に貸し出す金利(詳細は金利の項目で)。しかし金利自由化で今ではあまり効果なし。

・公開市場操作(→長期金利の操作) 日本銀行が国債や企業の手形を売買することで、市場に出回るお金の量を調整する。買いオペと売りオペ。

・支払準備率操作 民間の銀行が日本銀行に預けておかなければならない預金額。

 

災害の影響

 株式や不動産は、将来的にその価値が維持上昇するか不安視する投資家が増え、株価、不動産価格などは下落します。一方で、金などの一部の商品は、経済が崩壊しようとも、商品そのものに価値があるために信頼性は変わらず、相対的に人気が高まって価格は上昇する。これが有事の金と言われる所以です。

災害が金融商品に及ぼす影響

災害や戦争で物の供給が減った場合、不景気の状況でもモノの値段が上がる状況が発生します。これをスタグフレーションといいます。賃金は下がっているのに、モノの値段は上がり、貯金の価値も下がっていくので、国民としてはつらいことばかりです。


為替の影響

 為替は金融商品に多くの影響を及ぼします。また、為替の変動は多くの要因によって引き起こされます。ここでは書ききれないので、詳しくは為替と金融商品の関係で説明します。