ファンダメンタルズ指標

投資商品の本質的な価値を算出しようというのがファンダメンタルズ分析です。投資商品の値段は売りたい人と買いたい人のバランスで決まりますが、常にその値段が本来の価値と一致しているとは限りません。一時的なブームで高値がついている商品や、悪いニュースが公表さた直後に一時的に値下がりした商品はたくさんあります。さらに商品の値段には、将来への期待や不安も上乗せされているので、不確定な要素がかなり入っています。

しかし長期的に見れば、商品の値段は本質的な価値に近づくように修正されるはずです。異常に高値が付いた株は、その会社にそこまでの利益を出す力はないことが分かると値下がりして元の水準に戻ります。悪いニュースで値下がりしても、それが会社の経営にほとんど影響がないことが分かると、いずれ元の値段まで上がります。ということは、今の価値を正確に数値化できて、異常に低く評価されている商品を見つけて買っておけば、いずれ利益が出ます。また、将来的に価値が上がる商品を早い段階で見つけて大量に買っておけば、将来的に大きな利益を得ることができます。

このような特徴から利益を得るまでに時間を要すため、ファンダメンタルズ分析は長期的な株式投資によく用いられます。

 

では、どのようにして本当の価値を算出するのでしょうか?

そのためには経済にかかわる様々な指標を分析する必要があります。

ファンダメンタルズ分析に用いる指標には大きく二種類あります。経済全体に関する指標(経済指標)と、特定の企業に関する指標(経営指標)です。 経済指標はマクロな指標、経営指標はミクロな指標といえます。以降の章で、具体的な指標を例にとって説明していきます。


経済全体に関する指標(経済指標)

ある国の経済規模を表すGDP(国内総生産)や、物価を表すCPI(消費者物価指数)、雇用状況を表す失業率などが代表的です。また、経済政策の一部である政策金利なども参考にすべき指標です。簡単に解説します。

 

・GDP(国内総生産)

 一年間の間に国内で生み出された、モノやサービスの付加価値の合計です。海外から1kgの小麦を100円で買ってきて、パンを作って120円で売れば、差額の20円が付加価値です。この付加価値をすべて合計したものが、GDPとなります。経済活動は付加価値を生み出していく行為なので、GDP=経済活動の規模、といえます。

GDPを人口で割った"一人当たりGDP"や、年ごとに比較した"経済成長率"などもよく使われます。

 

・CPI(消費者物価指数)

 モノやサービスの価格の変化を表す指標です。様々な品目の価格を総合して数値化して、時代による変化を見れるようにしています。賃金の上昇とともにCPIが高くなれば、経済が成長している証拠ですが、賃金が上昇せずにCPIだけ高くなると、家計が苦しくなり経済が悪化する傾向にあります。

 

・失業率

 労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)の内、失業中で職探しをしている人の割合です。この数値が低ければ、全体的に企業の経営状況が良く、個人の消費生活も安定しているといえます。

 

・政策金利

 中央銀行(日本だと日本銀行)が金融機関に貸し出す金利のことです。政策金利を高くすると、金融機関から個人に貸し出される金利も高くなり、経済活動を抑える効果があります。景気の動向を見ながら、中央銀行が政策金利を設定して、経済を安定的な成長に導くように調整します。各国の政策金利の違いが、為替にも影響します。

 

他にも様々な指標がありますが、ここで詰め込んでも仕方ないので、詳しくは"中級知識"で紹介しています。

数値化は難しいですが、政府の方針や政治情勢なども検討内容に入ってくるでしょう。これらを総合的に判断すると、その国の経済が今後どうなるのか、他の国と比べてどうなのかが分析できます。そして、今後の株価や為替の変動を推測できます。


特定の企業に関する指標(経営指標)

個々の企業の経営状況を調べる際は、安定性、収益性、成長性の観点から分析するといいでしょう。安定性を表す自己資本比率、

収益性を表すROE(自己資本利益率)、成長性を表す営業利益成長率などが有名です。簡単に解説します。

 

・自己資本比率 ←安定性

 自己資本とは、返済する必要のないお金です。一方、他者から借りていて返す必要のあるお金を他人資本といいます。自己資本と他人資本の合計は、総資本です。自己資本比率とは、総資本に占める自己資本の比率です。この比率が高い方が、借金の割合が少なく、安定した経営ができているといえます。

 

・ROE(自己資本利益率) ←収益性

 自己資本に対して、どれだけ効率的に利益を出しているかを表す指標がROEです。純利益を自己資本で割って100掛けした%で表されます。

ROE(%) = (利益 / 自己資本) × 100

ROEが高い方が、限られたお金でより多くの利益を生んでいるので、効率的な経営ができているといえます。日本は欧米に比べてROEが低いですが、10%を超えると優良だといえます。

 

・営業利益成長率 ←成長性

 営業利益が前年に比べてどれだけ増加したかの比率です。この比率が高い方が、今後の成長が期待できるといえます。

 

こうした指標から、本質的な株価が算出できます。そして現在の株価と比較することで、大きな乖離が発生している株を見つけることができます。本質的な株価と、現在の株価を比較する指標もたくさんあるので、詳しくは”中級知識”で紹介しています。数値は業界やその時の経済状況、企業ごとのビジネスモデルによって様々ですので、そういった状況を考慮しながら、評価する必要があります。

 

ちなみに、本来の価値よりも安い値がついているものをバリュー(割安)株といいます。将来的に値上がりが期待できるものをグロース(成長)株といいます。これらを見つけることができれば大きな利益を手にできますが、投資のプロにとっても容易なことではありません。