上昇と下降のシグナル


株価が上昇する直前で買えれば大きな儲けが出ますし、逆に下降する直前で売れれば損失を回避できます。ですが、上昇と下降を確実に予測することは不可能です。とはいえ、上昇のシグナルと下降のシグナルを分析する方法があります。テクニカル分析という手法です。どのように分析するのか、代表的な三つの方法を学びましょう。

  • トレンド
  • 移動平均線
  • チャートパターン

トレンド

今の株価は上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのか、あるいは横ばい傾向にあるのかを、トレンドといいます。基本的に株価は上昇→横ばい→下落→横ばい→上昇 を繰り返します。そして、それぞれの傾向は一定期間続きます。つまり、今のトレンドは、何かイベントが発生しない限り、このまま続く可能性が高いといえます。

具体例を見てみましょう。2023年2月~9月にかけての日経平均です。

 

日経平均2023年2月~9月

4月~6月にかけて上昇トレンドで、7月~9月にかけて横ばいトレンドが続いていることがパッと見て取れます。しかし、見た目だけだと人によって解釈が変わりますし、これほどはっきりしたトレンドでない限りは把握ができません。ここでは、トレンドの把握の仕方を説明します。

 

日経平均 トレンド

まずは、移動平均線を用いたトレンドの把握の仕方です。25日線と75日線を見ると、4月~6月にはどちらも上向きであることが分かります。そして7月以降、25日線が横向きに代わり、75日線も9月ごろから横向きに代わっていることが分かります。

 

次に、ネックラインを用いたトレンドの把握の仕方です。ネックラインとは、直近の安値と安値を繋いだ線、あるいは高値と高値を繋いだ線です。4月から6月にかけては、安値(あるいは高値)を繋いだネックラインが上向きです。これは上昇トレンドを表します。7月から9月にかけては、高値を繋いだネックラインがほぼ水平です。これは横ばいトレンドを表します。

日経平均 シグナル34

トレンドを抑えるのは大切ですが、正直それでは遅いです。トレンドは長くは続かないからです。なので、トレンドが分かるタイミングをいち早く察知して、みんなよりいち早く動くことで、利益を最大化することができます。以降では、トレンドの変更辺を把握する手法を説明します。


移動平均線

例えば、25日線が75日線より下にあったとします。25日線が徐々に上昇して75日線に近づき、逆転したとします。これがゴールデンクロスと言われるシグナルです。短い日数の移動平均線の方が長い日数の移動平均線より反応が早いので、短い日数の平均線が下から上に突き抜けた時は、株価が上昇トレンドに転じる可能性が高いといえます。

逆に、短い日数の移動平均線が、長い日数の移動平均線を上から下に抜けた時、デッドクロスと呼ばれます。このシグナルが出た場合、この先下落トレンドとなる可能性が高いです。

 

日経平均で実際に見てみましょう。2月の終盤に、ゴールデンクロスのシグナルが出て、実際にその後上昇トレンドに変わりました。9月初めと10月初めには、デッドクロスのシグナルが出て、実際にその後、下降トレンドに変わりつつあります。

 

というように、なんとなく納得はできる理論ではあります。ですが、納得できるかどうかよりも、世の中の投資可能多くがこのシグナルを見てそうし判断をしているという事実が大切です。ゴールデンクロスが出た場合、多くの投資家が買いに走り、結果として株価が実際に上昇するからです。


チャートパターン

ネックラインの内、高値を結んだものを上値抵抗線、安値を結んだものを下値支持線といいます。

チャートがネックラインの帯の中で上下していて、ある時上値抵抗線より上に抜けたとします。このときを上値抵抗線の上抜けといいます。このシグナルが出ると、今までのトレンドに比べて上向きのトレンドに変化する可能性が高いです。

逆に、下値抵抗線より下に抜けたとします。この時を下値抵抗線の下抜けといいます。このシグナルが出ると、今までのトレンドに比べて下向きのトレンドに変化する可能性が高いです。

 

 

日経平均で実際に見てみましょう。5月初めに上抜けのシグナルが出て、その後上昇トレンドになっています。その後6月中旬に下抜けシグナルが出て横ばいトレンドに変化しています。その後8月中頃に下抜けシグナルが出ましたが、下降トレンドにはなりませんでした。こういうケースがよくあるので、100%信頼することはできません。最終的に、10月初めに再び下抜けシグナルが出て、下降トレンドに変化しました。

日経平均 上抜けと下抜け

最も有名なチャートパターンを紹介しておきます。三尊天井と逆三尊と呼ばれるものです。

三尊天井とは、チャート足が、下値抵抗線の上で、小さな一山、大きな一山、小さな一山を形作るパターンのことです。このパターンが現れると、下降トレンドに変化する可能性が高いです。株を持っている人たちの気持ちになって考えてみましょう。

今まで上昇トレンドだったものが、小さい山を描いて、値下がりしました。十分利益を得られたと感じたごく一部の人が売りに走ったからでしょうか。この段階では、大半の人がまだまだこれからも上がると信じています。

ここから株価が回復して先ほどの高値を越えると、動きの速早いひとや、今後の株価に疑いを持っている人が、一安心ということで売りに走ります。なので、先ほどより大きめに株価が下落します。

そしてももう一度値上がりしかけたのに先ほどの高値を更新できなかったときは、いよいよ大半の人が焦り始めて、一斉に売りに走ります。売りがさらなる値下がりを呼び、一気に下落トレンドに変わるのです。

 

 

逆三尊とは、その逆です。

株価が値下がりして、大半の人が塩漬け状態だったとします。しかし、さすがに値下がりしすぎだろうと考えた一部の投資家が購入し、一時底値を付けます。株価が一時的に回復したので、一部の株保有者が慌てて売りに走るので再び値下がりしますが、あくまで一時的です。

そこからさらに値下がりしますが、少数の人が買いに来ます。そして大きな谷を描いて回復します。それに気づいた多くの投資家が買いに走り値がありがさらに買いを読んで一気に上昇トレンドに変わります。

 

日経平均で実際に見てみましょう。2月から4月にかけて逆三尊が現れ、そこから一気に上昇トレンドになりました。6月~7月には三尊天井が現れ、一気に下降トレンドかと思われましたが、このときはそうなりませんでした。こういう期待外れもよくあります。最終的に9月に三尊天井が再び現れ、一気に下降トレンドになっていきそうな感じです。

日経平均 三尊と逆三尊

 

 

他にもいろいろあるので、興味のある人は詳しくはこちらのサイトを参照してください。

 

これもしっかりとした理論から導き出されたものではありませんので、これ通りならないことも多々あります。しかし、こういう分析をしている投資家が大勢いる=この通り株価が変動する可能性が高い ということは頭に入れておいた方がいいです。


 他にも無数の分析手法がありますが、ここで紹介した三つを覚えておけばいいでしょう。大切なのは、多くの人がその分析方法を採用しているかどうかです。多くの人が実践している手法だと、実際にそれ通りに株価が動くことがよく起こります。

 今までは株価を例題にして解説しましたが、FXでも同じ話が通用します。というよりも、FXの方がテクニカル分析がよく用いられています。参考にしてください。