目論見書の見方

 投資信託を選ぶ条件で、どのように投資信託を絞っていくべきかを解説しました。ここでは、一つ一つの投資信託についてより深く知るために重要な、「目論見書」の見方を解説していきます。

  1. 用語解説
  2. 商品分類および属性区分
  3. ファンドの目的・特色
  4. 投資リスク
  5. 運用実績
  6. 手続・手数料等

用語解説

具体的な目論見書の見方を説明する前に、まずは投資信託についての用語解説をしておきます。

単位型(ユニット型)・追加型(オープン型)

購入できる期間による分類です。単位型は、決められた期間にしか購入できません。追加型は、いつでも自由に購入ができます。長期投資を前提としているので、追加型を選びましょう。

 

オープンエンド型・クローズドエンド型

売却(解約)できる期間による分類です。オープンエンド型は好きな時期に売却できます。クローズドエンド型は、決まった日付(償還日)までは売却できません。基本的にオープンエンド型を選びましょう。

 

為替ヘッジ

海外の投資信託を保有していると、為替の影響で評価額が変動します。その変動の影響を無くす仕組みが為替ヘッジです。同じ商品であっても、為替ヘッジありのタイプと、為替ヘッジなしのタイプがあります。為替ヘッジありの方が、若干コストが余分にかかります。

 

インデックス

目標としている株価指標を表します(株価指標については株価指標の見方を参照)。インデックスファンドの場合、日経平均で日経平均であったり、ダウ平均であったり、必ず目標としているインデックスがあります。また、アクティブファンドであっても、何かしらの株価指標を上回る成績を目標としています。

 

決算頻度

投資信託の運用で得た利益は、その一部が分配金という形で購入者に還元されます。どれくらいの頻度で分配金が支払われるかを表したのが決算頻度です。毎月払うもの、半年払うものなどがあり、中には分配金を支払わずに再投資に回す商品もあります。

 

ファミリーファンド・ファンドオブファンズ

投資家が買う投資信託は、ベビーファンドとも呼ばれます。ベビーファンドには、同じような運用をしていても、為替ヘッジの有無や、決算頻度の違いがあるものがありますが、それらをまとめて運用した方が効率がいいです。それら類似のベビーファンドを取りまとめて資産運用しているのがマザーファンドと呼ばれます。このような運用方式をファミリーファンドといいます。

一方で、投資家が買う投資信託を通じて、複数のファンドに投資する方式がファンドオブファンズです。一昔前は、様々な国の金融商品に投資することが難しかったので、このような方式がありましたが、金融のグローバル化が進んだ今では、少数派です。管理費用が二重でかかるので、高い傾向があります。

 

投資信託の「目論見書」には、必ず上記の用語が出てきますので、理解しておいてください。

投資信託を株式市場に上場したETFという商品があります。上場株式をまとめた投資信託が上場してるなんて、何のことやらという感じがしますね。とはいえ、売買は簡単です。株と同じように売買するだけです。

メリットとしては、運用管理費が非常に安く、タイムリーに売買ができることです。デメリットとしては、株と同じように、購入できる最低額が決まっているので、ドルコスト平均法による積み立て投資ができないことです。


商品分類および属性区分

「投資を始めよう」では、国内株のインデックス投資信託を例にとりました。しかし、投資信託にはもっともっと多くの種類があります。

投資信託協会という機関が、投資信託の分類法を決めているので、参考にすると分かりやすいです。大雑把な分類が「商品分類」、より詳細な分類が「属性区分」です。具体的には、こちらのサイトを参照ください。

具体的に、以下三つの商品の商品分類ついてみてみましょう。

  • ニッセイ日経225インデックスファンド
  • ひふみプラス
  • たわらノーロード 先進国債券
商品名 単位型・追加型 投資対象地域 投資対象資産 補足分類
ニッセイ  追加型 国内 株式 インデックス型
ひふみ 追加型 内外 株式
たわら 追加型 海外 債券 インデックス型

※商品分類には書かれていませんが、目論見書を読んでいくとアクティブ型だと分かります。


ファンドの目的・特色

どの地域の何を対象に、どういう方針で運用していくのかが書かれています。

前述の日本国株のインデックスファンド、全世界株のアクティブファンド、海外債券のインデックスファンドを比較してみましょう。

○ニッセイ日経225インデックスファンド

「日経平均株価(日経225)」の動きに連動する投資成果をめざします。

○ひふみプラス

国内外の上場株式を主要な投資対象とし、市場価値が割安と考えられる銘柄を選別して長期的に投資します。

○たわらノーロード 先進国債券

FTSE世界国債インデックス(除く日本、)に連動する投資成果をめざして運用を行います


投資リスク

○どんなリスクがあるか

価格の変動要因には何があるかが書かれています。基本的に、以下のリスクのどれかが含まれています。

  • 価格(金利)変動リスク どの金融商品にもある
  • 為替変動リスク 外貨建ての商品ならある
  • 信用リスク 投資対象の信用度が低ければ大きい
  • 流動性リスク 投資対象が小さい市場なら大きくなる
  • カントリーリスク 情勢が不安定な国なら大きい

前述の三つの投資信託で見てみましょう。

商品名 価格(金利)変動リスク 為替変動リスク 信用リスク 流動性リスク カントリーリスク
ニッセイ  あり あり あり
ひふみ あり あり あり あり あり
たわら あり あり あり

○騰落率の推移

堅調に増えているのが理想です。三つの投資信託で見てみましょう。

ニッセイは年間騰落率が全体的に大きくプラス、基準価格は堅調に増加。

ひふみは年間騰落率がややマイナスが多く、基準価格は微増。

たわらは年間騰落率が絶対値は小さいが安定してプラス、基準価格も安定して増加

目論見書 投資リスクの比較

○騰落率の比較

こちらも三つの投資信託で比較してみましょう。

ニッセイは平均8.2で振れ幅もそこそこ、ひふみは平均4.3で少し低く振れ幅も大きい、たわらは平均2.5で振れ幅も小さい。


運用実績

○基準価額・純資産の推移

ニッセイは、上下しながらも長期的に大きく上昇

ひふみは、2017年に大きく成長するも、近年は不調

たわらは、低調ながらも安定して上昇

目論見書の見方 基準価額と純資産の推移

○組み入れ銘柄

ここでは詳しくは説明しません。

○年間収益率の推移

マイナスが出るのは当然なので、全体的にプラスならOK。

ここ最近は、株も債券もほぼ連動して動いているのが分かります。

目論見書の見方 年間収益率の推移

手続き・手数料等

信託期間は無期限のものを選びましょう。

購入時にかかる購入手数料は無料のがいいです

換金時にかかる信託財産留保額は無料のがいいです

運用管理費用(信託報酬)は、類似の投資信託なら安い方がいいです。

税金は、どの投資信託でも同じです。

商品名 購入手数料 信託財産留保額 信託報酬
ニッセイ  なし なし 年率0.274%
ひふみ 上限3.3%※ なし 年率0.858~1.078%
たわら なし なし 年率0.187%

※販売会社による。(無料の販売会社もある)

ひふみのみ、購入手数料がかかる可能性があります。

信託財産留保額は、最近の投資信託は無料のものが大半です。

アクティブファンドであるひふみが、そのぶんコストがかかっているので、信託報酬が高いのが分かります。


これで目論見書の見るべき内容は理解できました。いろいろな投資信託について目論見書を確認して、自分の理想に最も近いものを選びましょう。