金融商品の相関係数

 リスクを分散するには、様々な投資商品に分散投資することが重要です。何かの商品が値下がりしても、他の商品の値上がりでカバーして、トータルでは確実に利益を上がられるようにするためです。しかし、むやみやたらに複数の投資商品を買えばいいわけではありません。異なる値動きをする投資商品を、バランスよく保有しておくことが大切です。とはいえ、他の金融商品と全く無関係に値動きする商品は、存在しません。少ならからず影響し合っています。では、どうやって分散投資を考えていけばいいでしょうか?

 参考になるのが、相関係数というものです。数学の授業で聞いたことある人も多いでしょう。商品Aと商品Bがあったとき、その両者の値動きの傾向に関して、相関係数という数値が定義できます。相関係数は、-1~+1の間の数字を取ります。商品Aが10円値上がりしたときに商品Bも常に10円値上がりするなら、相関係数は+1です。商品Aが値上がりしても商品Bの値段が変わらないなら相関係数は0です。商品Aが10円値上がりしたときに商品Bが10円値下がりするなら相関係数は-1です。

 

 金融商品に置き換えて考えてみましょう。米国の株価が上がれば、その景気の影響が日本経済にも及び、日本の株価も上がる傾向にあります。基本的に米国株と日本株の相関係数は1に近いプラスの値です。日本株と日本国債についてはどうでしょうか?日本株が下がると、多くの投資家は国債を購入するようになり、国債の価格が上がります。つまり、相関係数はマイナスの値になります。

 では、実際に相関係数を見てみましょう。下の表を見てみてください(→リンク)。

金融商品の相関係数
JPモルガンより 相関係数

 米国株と日本株の相関係数は0.65なので、確かに同じ値動きをする傾向があることが分かります。全体をざっと見てみると、0に近くない数字がたくさんあるように見えます。これはつまり、他の金融商品と無関係に値動きする商品がほとんどないということを示しています。全体的に正の相関を示す組み合わせが多いですが、日本株式と日本国債のように相関係数が-0.24、つまり逆の値動きをする組み合わせもあることが分かります。

 しかし注意してください。上の表は、商品Aの値動きが商品Bに及ぼす影響を表しているのではありません。実際は、ある外乱要因によって商品Aと商品Bがどう変動するかを表しているといった方が正確です。したがって、外乱要因が何かによって。商品Aと商品Bの相関係数がプラスになることもあれば、マイナスになることもあるのです。もちろん外乱要因によって商品Aの値段が変動し、商品Aの変動によって商品Bの値段が変動することもあります。

 加えて、上の表は、特定の3年および10年の傾向を示しているだけで、期間を変えると数値は異なってきます。その期間にどのような外乱要因が発生したかで各金融商品の値動きは変わってくるので、未来にも当てはまるとか必ずしも言えません。とはいえ、それぞれの金融商品が同じような値動きをするのか、逆の値動きをするのかを大まかに把握するには便利な数値と言えるでしょう。

 ここで大事なことは、自分のポートフォリオを見た時に、1に近いプラスの相関関係を持つ商品ばかりを保有しないようにすることです。同じ値動きをする商品を数多く持っていたところで、分散効果はあまりなく、急な下落によって多くの資金を失うリスクがあります。ある程度傾向の異なる商品を保有しておくことで、リスク分散ができるようにしましょう。

【余談】

外乱要因によって、商品Aと商品Bの値段が変化したとき、商品Aと商品Bの値動きの関係を相関関係といいます。

一方、外乱要因と商品Aの値動きのような、原因と結果の関係を因果関係といいます。